尾洲屋羅紗店|広島・呉のオーダースーツ、洋服のリフォームショップ


by bisyuya
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お客様写真とコメント

当ブログではもはやお馴染み、ご存知頂いている方も多いのでは。
A様のお仕立が済みましたのでお写真を撮らせていただき、
また後日ブログ用コメントを頂きましたのでありがたく登載させて頂きました。

いつもながら楽しく、物語仕立てに当店での体験を書いて頂き、
私が普段書いているお堅い文章より、お読みの皆様にもおおいに楽しんで頂けると思います。

では

*********** 以下、A様よりのコメント ***********

グレーのツイードがほしくなり、イメージに近いもので「普通のようで普通でない」
こちらの在庫生地からジャケットを作りました。

これはソフト・ツイードといって5%カシミアが入っている表面がなめらかで若干やわらかく
軽い生地で、フランネルかと間違えてしまいそうです。ツイードというと自分の先入観では
でこぼこの表面とざらざらした手触りですが、それにサンド・ペーパーをかけて仕上げて
しまったような感触があり、好き嫌いが分かれるかもしれません。
生地はダンヒルでそれなりのかっちりとした重厚さと質感はあります。

私が特に気に入ったのはミディアム・グレイ地のなかに、これもネップって言うんでしょうか、
小さな黒や白の斑点がちりばめられていて、そのモノトーン系のバランスによってえも言えぬ
奥深い小宇宙を垣間見ることができることです。こういうと生地マニアの発想だなんて
友人はからかうのですが、夜空の満天の星を見上げていて思わず吸い込まれていきそうな
感覚に襲われることってあるでしょう?それに似た「畏れ」(おそれ)を感じることが
できるのです。

なぜと問われてもそれはDNAにすり込まれた太古からの嗜好というしかないですね。
それゆえグレーという色もネップも世代を越えて愛され続けているのです。


 パンツはドーメルのやわらかいコーデュロイの黒を、ハリス・ツイードのハンチングは白黒の
大柄ヘリンボーンにしてめりはりをつけてみました。全体で使っている色の数は少なく
限りなくモノトーンに近い状態ですが、こういう抑制の効いた合わせも自分としてはチャレンジ
ですね。これにセーターとシャツを加える予定ですが、セーターの色はもうひとつがまんして
地味に抑えることにし、シャツを派手な色にしたいです。

 まだ同じジャケット生地の色違いが複数お店には残っていて「小宇宙」を味わいたい方には
おすすめです。実は先日見ていて「しまったっ、あっちの色のほうがよかった!」とないもの
ねだりしたほどです。


ほら、正面にすわっているあなたをちょっと上から見下ろしているアレですよ。

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お客様写真とコメント_b0081010_295024.jpg

お客様写真とコメント_b0081010_2132532.jpg

Aさまはいつも刺繍にご自分の名前でなく、思い(テーマ!?)の一言を刺繍されています。
因みに今回はMundane “ありきたりの”とか“ごくふつーの”という意ですが、
実際はそうじゃないんだよ!と逆の意味で。
ここら辺もオーダー!余すことなく楽しんで頂いてます。

文中に出てきたネップとは?と聞かれれば
“意匠糸の一種で絡み合った玉のような節糸”などと思わず思い浮かんでしまいますが、
そう言ってしまえばそれまでで、ネップ糸の入った生地を見て感じられたままを“小宇宙”
と言われると自分の解釈の味気なさにハッとしてしまいます。

着る楽しさを思い起こさせてくれるコメントでした!
A様ありがとう御座いました。
by bisyuya | 2010-10-19 01:27 | ◆お仕立 men's&ladies